東京都健康長寿医療センター研究所は、「ペットとの共生が人と社会にもたらす効果」という研究成果を公表した。
犬や猫の飼い主は、歩行運動が多く、社会との関係性が良好な状態にあることがわかっている。つまり、ペットとの共生により、飼い主の運動習慣や社会参加が維持・向上することが考えられる。
- ペット飼育とフレイル
フレイルは、健康(自立した状態)と要介護状態との間にある、加齢により心身が老い衰えた状態。日本人高齢者を対象として、犬や猫などのペットの飼育経験を調査し、フレイルではない約7,900人(平均年齢73.6歳±5.3歳)を2年間追跡調査した結果、ペットの中でも犬に限った場合、犬を飼育している群のフレイル発生リスクは0.81と、約2割のリスク減になることが示された。 - 犬の散歩と健康長寿
ペットとの共生による効果として、フレイルと関係性の深い要介護状態や死亡との関連性を調べた。日本人高齢者約11,000人を3.5年間追跡調査した結果、ペットの中でも、犬の自立喪失発生リスクの低減は顕著であり、犬を飼育している群のリスクは0.54倍と5割近いリスク減になることが示された。
犬の散歩は、通常の歩行と同程度の運動強度だが、運動の継続に有効で、犬を飼育することによる日々の運動習慣の維持が、飼い主の健康に良い効果をもたらしていると考えられる。 - ペット飼育者の介護費は安い
ペット飼育者は、身体的・社会的に良い状態にあることから、ペットを飼育していない群に比べると医療や介護の利用が少ないことが考えられる。そこで、既往歴や要介護認定者の割合が同程度である、ペット飼育者とペット非飼育者合わせて460人を対象に、約1年半の医療費及び介護保険サービス利用費の差異を調べた結果、ペットとの共生は、飼い主への直接的な健康効果のみならず、介護費といった社会保障費への抑制効果が期待できることが示された。 - ペットを飼育しやすい環境づくり
これまでの研究成果から、ペット飼育による健康や社会保障費への効果が明らかになってきた。ペットを飼育しやすい環境を整備することは、健康長寿や持続可能な社会の実現に重要であると考え、ハード面とソフト面の両方で社会実装できるよう取り組みを始めている。