AMR臨床リファレンスセンターは、海外旅行中の体調管理や薬についての調査結果を発表している。
夏休みを前に、海外旅行を計画している方も増えていると思われる。しかし海外では新型コロナウイルス感染症の状況が日本と異なっていたり、国内ではめったにかかることがない感染症も多くみられる。
海外旅行中、慣れない環境や疲れから体調を崩した場合、医療システムも医療機関へのアクセスも日本とは異なるため、すぐに医療を受けられない可能性があり、海外旅行に出かける際には体調不良時の対応について考えておく必要がある。
調査結果に合わせ、国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター・総合感染症科の感染症専門医である守山祐樹医師が、「海外旅行で気を付けたい8つのポイント」を説明している。
感染症専門医が提案する「海外旅行で気を付ける8つのポイント」
調査結果
9割の海外旅行者が体調について気を付けている
海外旅行において旅行者はどのような点に気を付けて旅行をしているか聞いたところ、「生水を飲まない」が66.5%で最も高く、次いで、「常備薬を持っていく」57.3%、「生ものを食べない」46.0%という結果となった。また、何かしら気を付けている人は92.7%にのぼり、ほとんどの人が体調に気を付けて、海外旅行に行っていることが判った。
約半数が海外旅行中に体調不良を経験
海外旅行中に体調が悪くなったことがあるか聞いたところ、半数以上の人が体調不良になった経験があった。
その中でも一番多かったのは下痢28.8%、次に腹痛23.8%、発熱20.3%という結果となった。
抗菌薬の自己判断による使用は危険だらけ
海外旅行中に抗菌薬・抗生物質を購入したことがあるかどうかを聞いたところ、32.5%の人が「購入したことがある」と回答した。
海外では医師の処方箋なしにドラックストアなどで抗菌薬を購入できる地域がある。しかし抗菌薬は病原体の種類により効果のあるものが異なり、自己判断で内服すると効果が期待できない可能性がある。また、副作用や薬剤耐性菌による感染症を引き起こすリスクもあるので、医療機関を受診し、医師に診断してもらうようにする。
〇海外旅行での2つのリスクとは
1つ目は「日本ではかかりにくい病気にかかるリスク」。海外では地域によって日本ではほぼ罹ることのないマラリア、デング熱、腸チフス、狂犬病などの病気にかかるリスクがある。自己判断で抗菌薬を服用することにより、重大な病気の発見が遅れる可能性がる。また、不必要な抗菌薬の服用は、薬剤耐性菌が出現する可能性につながる。
2つ目は「薬剤耐性菌に感染するリスク」。世界には、薬剤耐性菌が日本よりも多く分布する地域があり、また感染対策が十分でない地域もあり注意が必要。