東京都健康長寿医療センター研究所は、「加齢性難聴を有する高齢者の約7割は病院受診を希望していない」とする研究成果を公表した。
発表内容の概要(抜粋)
高齢者の聴力と、耳の聞こえの不調について病院を受診する意向があるかを調査し、約7割の加齢性難聴を有していると考えられる高齢者は診察を希望していないことを明らかにした。
研究成果の概要(抜粋)
加齢性難聴は、転倒発生や認知機能の低下など高齢者の健康に悪影響を及ぼすことがこれまでの研究から報告されてきた。この加齢性難聴には根本的な治療はないため、耳鼻科などの関連診療科を通じて加齢性難聴の診断を受けた後に、補聴器装着など適切な対応を早期にとる必要がある。しかし、どの程度の高齢者が耳の聞こえの不調に関して診察を希望しているかについては明らかではなかった。
研究チームでは、2022年に群馬県草津町で行った健康調査に参加した385名の75歳以上の高齢者のデータを解析し、これを明らかにすることとした。
調査の結果、37.4%(144名)の高齢者に中等度以上の難聴が認められた。この中等度以上の難聴者のうち、耳の聞こえの不調に関して診察を希望している者もしくは既に受診したことがある者は 29.9%(43名)に留まり、大多数の加齢性難聴と考えられる高齢者は受診の希望を抱いていないことが明らかとなった。この傾向は難聴の自覚の有無に強く影響を受けることも分かった。
研究成果の意義(抜粋)
本研究から高齢者における加齢性難聴による受診意向の低さが明らかとなった。個人によっては診療科への受診を経ずに補聴器を購入する方もいるため、一般化は難しいが、本結果は加齢性難聴を抱える方の問題意識がそれほど高くないことを示す結果と言える。
本研究では難聴の自覚がない方ほど受診の意向が低いこともわかった。これは当然の結果とも言えるが、難聴の自覚を持ってもらうことの必要性を示す結果でもある。早期の補聴器装着が認知症の危険性を下げるといった研究結果もあることから、定期的な耳の聞こえのチェック(耳の聞こえの不具合の顕在化)を通じた耳鼻科等への受診勧奨のシステムが必要であると考えられる。