高齢糖尿病患者における食品摂取多様性とフレイル

東京都健康長寿医療センター研究所は、「高齢糖尿病患者における食品摂取多様性とフレイルの関連」ついての研究を発表した。

糖尿病とフレイル(抜粋)

令和元年度国民健康・栄養調査によると20歳以上で糖尿病が強く疑われる人の割合は、男性19.7%、女性10.8%であり、年齢階級別では、年齢が高い層でその割合が高くなる

血糖値を下げる唯一のホルモンはインスリンで、加齢に伴いインスリンの分泌が低下し、また体脂肪量増加や骨格筋量の低下によりインスリンの分泌量は十分であっても作用しづらくなる状態になる。こうしたことを原因として、年齢が高くなると糖尿病の割合が増えていくと考えられる。

糖尿病の方にフレイルが多いことが分かっている。低栄養、高血糖、低血糖などはフレイルと関連しており、糖尿病の方がフレイルとなりやすくなる要因となる。また糖尿病は治療のひとつとして食事管理が行われることが一般的だが、厳しいエネルギーコントロールなどの過度な食事の管理はフレイルを引き起こす可能性があり、高齢期における糖尿病の食事・栄養ケアはフレイル予防を加味することも重要となる。しかし、高齢糖尿病患者においてフレイル予防のための食生活については十分なエビデンスが構築されていない。

食事とフレイル(抜粋)

食事の評価の簡便な方法として食品摂取の多様性スコア(Dietary Variety Score:DVS)が挙げられる。これは肉類、魚介類、卵類、大豆・大豆製品、牛乳、緑黄色野菜、海藻、いも類、果物類、油脂類の10食品について、「毎日食べる」を1点、それ以外を0点とし、10点満点で評価する。DVSは、高齢者の栄養疫学研究で広く使用されており、DVSが高い人は、穀物エネルギーの比率が低く、タンパク質と微量栄養素の摂取量が大幅に多いことが報告されている。このDVSはフレイルの人で有意に得点が低いことが分かっている。DVS には、10 品目のうち 5 品目(肉類、魚介類、卵類、大豆・大豆製品、牛乳)がタンパク質源で構成され、残りの 5 品目(緑黄色野菜、海藻、いも類、果物類、油脂類)はビタミンとミネラルの供給源で構成されている。また多くの研究では、タンパク質、ビタミン A、葉酸、ビタミン D、および総エネルギーの摂取量が少ないことが、高齢者のフレイルと関連していること分かっており、食事の多様性が低いと、エネルギー、タンパク質、およびビタミンの摂取量が少なくなり、フレイルの発生に関連すると考えられる。

糖尿病と食事とフレイル(抜粋)

糖尿病の既往歴の有無と食品摂取の多様性が高い群と低い群の組み合わせとフレイルの関係をみた。

その結果、糖尿病で食事の多様性が低いとフレイルの発生リスクが高くなることが分かった。糖尿病の高齢者は、糖尿病のない高齢者と比較して栄養不良状態になる可能性が高いことも分かっているので、糖尿病の高齢者の食事管理は、厳格な食事制限から、年齢とともにフレイル予防にも着目していく必要がある。

おわりに(抜粋)

糖尿病と食品摂取多様性の両方が、高齢者のフレイルと関連しており、それらが組み合わさることによりフレイルの方が増加した。 これらの調査結果は、糖尿病の方のフレイルを予防するためには、食事の多様性が重要である可能性があることを示唆している。

高齢糖尿病患者における食品摂取多様性とフレイルの関連 東京都健康長寿医療センター研究所(2024年1月5日)
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