東京都健康長寿医療センター研究所は3月、「筋活にはビタミンCが必要!」とするパンフレットを公表した。
はじめに(抜粋)
私たちが通常「筋肉」と称しているのは、「骨格筋」で、標準的な男性や女性の骨格筋量は、体重の30~40%を占める。筋肉にはビタミンCが存在しており、総量はとても多い。以前の研究で、東京都板橋区在住の70~84歳の女性を対象とした横断調査により、血液中のビタミンC濃度が高い女性は、筋力や身体能力が高いことを明らかにした。しかし、この調査からは、反対に血液中のビタミンC濃度が低い女性は、筋力や身体能力が低いという知見を得ることはできなかった。
この点を明らかにするため、からだの中でビタミンCを作れないビタミンC合成不全マウスを用いて、ビタミンCの不足が筋肉に及ぼす影響を調べた。すると、ビタミンCの不足期間が長くなるにつれ、性別に関係なく、筋肉が萎縮し、筋重量が減少した。とても興味深いことに、ビタミンCを再び与えると筋重量や身体能力が急速に回復した。
筋肉の種類と特徴(抜粋)
からだを構成する筋肉は、大きく「骨格筋」「心筋」「平滑(内臓)筋」の3種類に分けられる。このうち、通常「筋肉」と称しているのは「骨格筋」となる。標準的な男性や女性の骨格筋量は、体重の30~40%を占める。
骨格筋は、両端にある腱が骨に結合し、筋肉が収縮したり弛緩したりして、からだのバランスを整えたり、走るなどの運動ができる。また、骨格筋は、筋線維の構造上の特徴や収縮速度の違いから「遅筋(赤筋)」と「速筋(白筋)」の2種類に分類され、遅筋は収縮速度が遅く、長い間収縮し続けることができる。そのため、長時間の持続的な運動に適している。一方、速筋は収縮速度が速く、瞬発的な動きや大きな力を必要とする運動に適している。
血液中のビタミンC濃度が高い女性は、筋力が強く、身体能力が高い(抜粋)
東京都板橋区在住の70~84歳の女性(957人)を対象とした横断調査を実施した。解析の結果、血液中のビタミンC濃度が高い女性は、握力が強く、片足で立っていられる時間が長く、通常の歩行速度が速いなど、同世代の中でも運動機能が高いことが分かった。つまり、血液中のビタミンC濃度の高い女性は、筋力が強く、身体能力が高い。
筋活にはビタミンCの摂取が必要(抜粋)
ビタミンCは、食品や飲料、サプリメントなどから安価で容易に摂取できるが、ビタミンCは水溶性のため、尿から排泄されやすく、からだの中での消費量も多い。そのため、気づかないうちにビタミンCの不足状態に陥っている可能性がある。ビタミンCの不足状態が長くなると、ビタミンCを合成できないマウスを用いた研究からも筋肉が萎縮し、筋重量が減少する。これを避けるためにも、はビタミンCを十分に摂取するよう日頃から心がける必要がある。厚生労働省は、「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」の中で、1日のビタミンC推奨量を100ミリグラム(いちご5~6個ぐらい)と定めている。筋活のためにもビタミンCを積極的に摂取したい。