うつ病は、何もやる気が出ない(意欲低下)・悲しい気持ちになる(抑うつ気分)などの「こころの症状」と、食欲がでない(食欲低下)・眠れない/起きられない(不眠/過眠)・体がだるい(倦怠感)・口が渇く・頭痛・動悸・めまいや耳鳴りなどの「体の症状」が現れる病気です。体の症状が目立つため、こころの症状に気づきにくいことがあります。体の不調を感じたときは、かかりつけ医に相談してみましょう。
うつ病で現れる、こころの症状と体の症状
うつ病は、ストレスなど様々な原因により生じる、こころと体の両方の症状からなる病気です。約16⼈に1人は、一生のうちに一度はうつ病にかかるといわれており、決してまれな病気ではありません。うつ病は「こころの風邪」ともいわれるぐらい誰にでも起きる病気ですが、風邪と比べて非常につらい症状で、仕事や学業・家事ができなくなるなど大きな影響を及ぼす病気です。適切な治療を受けないと、時として自殺にまで追いつめられることがあります。
「こころの症状」として、「意欲低下(何もやる気になれない、普段は楽しめていたテレビや読書などが楽しめない)」「抑うつ気分(物悲しい気持ちになる、気分が晴れずすっきりしない)」があります。
これらに加えて「不安・焦燥感(不安な気持ちが頭から離れない、イライラする、焦る)」「注意・集中力の低下(考えがまとまらない、仕事や家事に集中できない、些細なことすら決断ができない)」「無価値感・罪業感(自分は役に立たない人間だと感じる、些細なことについても取り返しのつかない悪いことをしてしまったと思い悩む)」場合によっては「希死念慮(死にたくなる、死や自殺について考える)」などがあります。これ以外にも「感情が抑えられない」「感情がわいてこない」「人と会いたくない/人と話をすることが苦痛に感じられる」「出かける気になれない」など、様々なこころの症状が現れます。
こころの症状だけでなく、様々な『体の症状』も現れます。「不眠(眠れない、寝付けない、朝早く目が覚めてしまう、ぐっすり眠った感じがしない)」または「過眠(起きられない・眠りすぎる)」「食欲不振(食欲がない)」「吐き気」「胃の不快感」または「過食(食べすぎる)」「口が渇く」「味覚が変わった」「倦怠感(体がだるい)」「疲労感(すぐに疲れる)」「めまい」「耳鳴り」「頭痛」「頭重」「肩こり」「体の痛み」「息苦しさ」「動悸」「手足のしびれ」「冷感」など、これら以外にも様々な苦痛な体の症状が出現します。
体の症状が⽬⽴つときや、体の病気が原因のことも
特に軽症のうつ病では、体の症状が目立ち、こころの症状がわかりにくい場合があります。めまい・耳鳴り・頭痛・肩こり・手足のしびれなどで内科などを受診して様々な検査を繰り返しても体に病気の原因が見つからない場合は、うつ病の可能性があります。こころの症状が目立たない場合には、患者自身も、その周りの家族もうつ病とは気づかずに、つらい症状に対して適切な治療ができずに、長い間苦しむことがあります。実際に多くのうつ病の人が、うつ病の症状のためにはじめに受診した診療科が、内科・産婦人科・脳外科などの精神科以外であることが知られており、自らはこころの症状を治療の対象となる病気の症状とは気づかないことがあります。内科を受診したうつ病の人の訴える主な症状は体の症状が多く、なかなかこころの症状について相談を持ちかけないという報告もあります。
うつ病により体の症状が出現するのとは逆に、体の病気のためにうつ症状が出現する場合があります。糖尿病・心臓病・がんなどの慢性疾患や脳梗塞・心筋梗塞を患う患者はうつ病にかかりやすいことが知られています。
様々な検査でも原因のわからない、つらい体の症状がある場合は、同時にこころの症状があるかもしれません。かかりつけ医や精神科に早めに相談してください。信頼できるかかりつけ医に相談して精神科を紹介してもらうのもよいでしょう。また慢性の身体疾患で治療中の人や急に重篤な身体疾患を患った人も、こころの症状について定期的に主治医と相談してください。
家族や同僚など周りの人が様々なこころや体の症状で困っている場合にも、早めに病院を受診することを勧めてください。その際には様々な体の症状はうつ病からも生じることや、こころの症状で病院を受診することは特別なことではないことを強調してください。消えてなくなりたい・死にたいなどの自殺を考えている言動やそぶりのある場合は特に早急な相談が必要です。
うつ病は、多くの人がかかる病気ですが、適切な治療を受けないとつらい症状が長く続き深刻な悪い影響を及ぼします。様々な検査で体に異常の原因が見つからない場合、うつ病かもしれません。かかりつけ医や精神科に早めに相談してみることが重要です。