東京都健康長寿医療センターは、「「認知機能低下が死亡リスクをどう高めるかは孤立の種類次第: “独居”と“希薄なつながり”は正反対の作用を持つ」という研究成果を発表した。
概要(抜粋)
認知機能低下や認知症は、将来の死亡リスクを高める因子として知られている。この関係性に影響を与える要因として、性別、人種、認知症のタイプ等が報告されているが、「孤立」がこの関係性に影響を及ぼすかは明らかにされていなかった。
研究チームは、都市部高齢者の疫学データを用い、認知機能低下と総死亡の関係性に対して、「孤立」がどのように作用するかを調べた。孤立については多くの研究が行われているが、その定義等は研究によって様々となる。本研究では、「世帯構成(独居か否か)」「社会的ネットワーク(他者との交流頻度)」「社会参加活動(地域活動等への参加状況)」の3つを取り上げた。
研究成果の概要(抜粋)
生存分析の結果
- 認知機能低下は死亡リスクを1.37倍上昇させていた(ハザード比:1.37)。
- 世帯構成と認知機能低下」および「社会的ネットワークと認知機能低下」には統計学的に有意な交互作用がみられた。
詳しい分析の結果
- 他者との交流頻度が少ない人では、多い人に比べて認知機能低下が総死亡に与える影響は強かった(1.60倍 vs. 1.24倍)。
- 世帯構成別にみると、独居の人の方が、誰かと同居している人よりもその影響は弱かった(1.13倍 vs. 1.43倍)。
以上により、“独居”と“希薄なつながり”は、共に孤立の指標として用いられることが多いものの、その働きは正反対であることが分かった。
研究の意義(抜粋)
高齢化が進展する我が国では、認知機能低下者や認知症高齢者への支援やケア体制の構築は喫緊の課題であり、その際には孤立の種類を把握し、十分に考慮すべきであることを示唆している。